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チアガール「Passion Sisters」

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全選手個人成績(投手)

全選手個人成績(野手)

 

・2014年成績 

前期:19勝40敗1分 .322(4位) 

後期:31勝26敗3分 .544(1位) 

シーズン:50勝66敗4分 .431(4位、シリーズ敗退) 

ピタゴラス勝率:58勝62敗 .484

得点:476(4位) 失点:491(1位) 得失点差:-15(3位)

1試合平均観客動員数:5412人(2位) ホーム1試合平均観客動員数:4958人(2位)

 

 

・チームデータ【打撃・走塁】

得点:476(4位)

OPS:.691(3位)

打率:.267(3位)

出塁率:.327(3位)

長打率:.364(3位)

本塁打:52(2位タイ)

四球:318(2位)

三振:663(2位)

犠打:85(1位)

犠飛:42(1位タイ)

盗塁成功率:70.2%(3位)

 

 

・チームデータ【投手・守備】

失点:491(1位)

防御率:3.59(1位)

先発防御率:3.52(1位)

救援防御率:3.73(2位)

FIP:3.71(3位)

WHIP:1.32(2位)

BB/9:2.63(2位)

K/9:5.73(3位)

被本塁打:48(2位)

失策:97(1位)

DER:.672(1位)

 

 

・月別チーム成績

3月:3勝3敗      得点16 失点26 得失点差-10

4月:5勝15敗1分   得点67 失点94 得失点差-27

5月:5勝16敗      得点76 失点92 得失点差-16

6月:6勝6敗        得点52 失点52 得失点差0

7月:8勝7敗      得点63 失点54   得失点差+9

8月:11勝11敗1分 得点115 失点102  得失点差+13

9月:9勝6敗2分   得点55 失点50  得失点差+5

10月:3勝2敗    得点32 失点21  得失点差+11

 


・状況別成績

ホーム:30勝28敗2分(3位)

アウェー:20勝38敗2分(4位)

1点差試合:13勝24敗

延長戦:2勝4敗3分

対右先発投手:36勝46敗4分

対左先発投手:14勝20敗

 

 

・チームサマリー

最多貯金:2

最多借金:22

1試合最多得点:18

1試合最多失点:14

最大連勝:5(8/3~8/9)

最大連敗:8(5/10~5/24)

完封:6

被完封:12

 

 

 今年は中信兄弟ファンにとっては波乱万丈、悲喜こもごも溢れたシーズンであっただろう。突然の球団売却でチーム名を変更してのリスタート、前期の稀に見る大不振、そこからの後期優勝、台湾シリーズでの敗戦…しかしこの一年は後々中信兄弟の歴史を振り返る上で重要なシーズンになったのもこれまた疑いようがない事実である。シーズンレビューではあるが、野球場での戦い以外にも目を向けてこの一年を振り返ることとする。

 

 2013年10月19日、台湾プロ野球界に激震が走った。台湾にプロが誕生する以前から野球界を引っ張る存在となっていた伝統ある球団、兄弟象が以前から積み重なっていた大型赤字を理由に突如球団売却を表明。今振り返れば親会社は一つのホテルにすぎず、ここまで約30年間球団を運営し続けられたこと自体が凄かったと言えるものの、歴史ある人気球団の解散はやはり大きな衝撃を球界に与えた。12月3日には10年間の球団命名権などを与えるという形で以前中信ホエールズ(既に解散)を経営していた中国信託銀行が4億元で買収した。とはいえ金融業を営む企業が金融以外の事業に対する投資を5千万元以上行えないという法律に従って、球団の経営は名目上中国信託銀行がスポンサーとして支援している華翼育楽公司を通し行われることとなった。翌年1月5日にチーム名を「中信兄弟」にすると発表したが、球団マスコットやユニフォームに大きな変更を加えることはなかった。新体制により選手との契約更改が遅れ、若干の問題が発生した以外は大きな問題もなく無事開幕を迎えた。

 

 開幕戦は3月23日、新莊での統一戦だった。新球団として迎えた初戦は彭政閔の犠飛で先制、さらに今年加入したオールドルーキー林威助のソロによってあげた2点を4人の完封リレーで守りきり歴史的な勝利をあげた。さらに25日の義大戦では1-2でサヨナラ勝ちしNPBから台湾に戻った鄭凱文に白星をプレゼントし連勝スタート。「前期に弱い」が兄弟の悪しき伝統だったが、それも球団名が一新され消えてなくなったかのように思われた。しかし現実はそう甘くはなく以降前期は黒星を積み重ね続けることとなり、6月4日まで連勝がないというありさまだった。3戦目の27日から3連敗すると4月5日からは5連敗、23日からは6連敗。特に打線の不振が非常に深刻で兄弟打線の新戦力とされオープン戦好調だった羅培茲(ロペス)が8試合で打率.115、0HR、1打点という体たらくで6日に解雇されると(代わって賈羅拉加(ガララーガ)が登録)4月中旬にはもう一人の新戦力、林威助の半月板損傷が判明。12日の統一戦で史上最年少本塁打を放った18歳の陳子豪が不振の打線の中にあって奮闘していたが、今季から5年契約を結んだ主軸の周思齋が23日に.167/.271/.200という不振により二軍落ちし、打線全体は例年よりも酷い貧打に見舞われていた。結局17日に最下位に転落してからは一度も3位にすら上がることなく長い消化試合をファンは見守ることとなる。

 

 5月に入っても状況は一向に上向く傾向が見られず、10日から18日まで今季ワーストの8連敗を喫し、月間16敗は12年8月の興農ブルズ以来となる職棒ワースト記録となった。打線のテコ入れを決意した球団は中距離打者の耐克(ネグリッチ)を獲得し、開幕からの39戦で職棒ワーストの117得点と苦しむ打線に一筋の光が見えた。

 

 6月は相変わらず最下位を独走していたものの状況は若干改善され6勝6敗で前期を終えた。この月は人事の異動が激しく、外国人では開幕から抑えを任されるも先発に転向していた科龍(コロン)を右太ももの鼠蹊部を傷め成績が振るわなかったため解雇し2年間兄弟で抑えを務めていた湯瑪仕(トーマス)、また左腕先発の寇迪(コディ)を獲得し残り1枠の外国人枠をガララーガと争わせた。また首脳陣においては一軍打撃コーチが王金勇→丘昌榮、一軍投手コーチが葉詠捷→黃欽智(シーズン途中に引退)に交代となった。23日のドラフトではパワーヒッターの許基宏、実力派右腕の江忠城など主に即戦力を指名し弱点解消に努め、後期は獲得した9人中6人が一軍の舞台を経験することとなった。

 

 7月から後期に入るとチームは生まれ変わったかのように勝ち始めた。前期3勝17敗と全く勝てなかったLamigoを相手に後期開幕を迎えたが、なんとそれまで11連敗していた敵地桃園で3連勝スタート。8日の統一戦には敗れるも10日から12日までまたも3連勝。優れた投手陣をバックに接戦に競り勝つことができるようになり後期最初の10戦を7勝3敗と上々の出来だった。しかし17日から4連敗し義大に首位を明け渡してからはシーズン最後までマッチレースが続くこととなる。外国人については5日に先発で今一つだったガララーガを解雇、20日には桑契斯(サンチェス)を獲得した。

 

 8月に入ると3日から9日まで5連勝し義大から首位を再び奪い返し、一つ負けを挟んで再び3連勝と波に乗ると2位義大とのゲーム差は2.5にまで開いた。しかし8月後半からチームは再び下り坂に入り16日から月末までは3勝8敗1分。外国人枠は安定感が今一つだったトーマス、「3番・二塁」で大活躍していたネグリッチが左太ももの筋断裂のため解雇となり、ポップコーンリーグで活躍していた抑え右腕、湯尼(トニー)を獲得しサンチェスとコディで外国人枠3名を確定させた。

 

 9月は義大との首位の奪い合いを繰り返しながらも9勝6敗と3つの貯金を作り、個人記録では6日の試合で開幕から変わらず4番で出場のベテラン彭政閔が通算1500安打を史上最速で達成し、投げては7月から加入のコディが25日の統一戦で11試合連続QSを達成。スピードは欠けるものの制球よくコーナーを突く安定感ある投球で打者を料理するコディは後期好調の兄弟に欠かせない存在となっていた。またドラフトで獲得した長距離砲、許基宏が1Bとして出場を始め、9月のOPSは.956と22歳のルーキーながら兄弟が渇望していた打線の新たな火付け役となった。また開幕から先発ローテを守っていた陳鴻文は状態が悪く9月上旬からリリーフに回った。9月終了時点では首位義大に1ゲーム差の2位につけた。

 

 10月に入り残り試合は5試合を残すのみとなっていたが、そのうち4試合を義大戦が占めており義大との勝敗が優勝を分ける結果となることは明らかだった。そのような中で2日の義大戦を迎えたがなんと後期抜群の安定感を見せていた先発コディが3.1IP/8Rと乱れ、チームは8点差を逆転され敗戦と予想外のスタートとなってしまった。続く3日、5日の義大戦に連勝しマジック1が点灯したものの、8日の勝てば優勝となる最後の義大戦で延長10回サヨナラ負け。これにより最終戦となった12日の統一戦に勝てば優勝、引き分けまたは負ければ義大優勝という天王山を迎えることになった。2日雨により流れた最終戦は先発コディが9.0IP/14K/0Rと最高のピッチングを見せ0-3で勝利。シーズン最終戦で後期優勝という劇的な結末を迎えたのだった。

 

 18日からLamigoとの台湾シリーズが始まったがシリーズ開幕前からチーム内で紅白戦などを行い万全の態勢で迎えたLamigoと後期最終戦まで全力で戦い抜いた兄弟とのコンディションの差がはっきり出てしまったシリーズとなった。18日の第1戦では先発コディが5.0IP/3Rと試合は作ったものの肘の違和感を訴えわずか74球で降板し打線も散発6安打に封じられ敗戦。コディを1、4、7戦で使うというプランも机上の空論に終わることとなった。第2戦は2回に4点を先制するもリードを守り切れず同点に追いつかれた4回途中に謝長亨監督は先発の林煜清を2番手に送るというギャンブルに出たが、5回に勝ち越しを許し結果は失敗。投手陣のやりくりに悩むチーム状態を顕著に示すこととなってしまった。ホーム新莊に舞台を移した21日の第3戦では先発サンチェスが不安定で2.2IP/5Rと大乱調。守備も3失策と乱れ、打線は5安打に終わり8-2で敗戦。この試合でほぼシリーズの勝負の行方は見えてしまっていた。第4戦ではリリーフから中2日で先発した林煜清が6.0IP/1Rと好投し一矢を報いたが、第5戦では初回に3点を先制するも5回に集中打を浴び4点を奪われ逆転されると9回にはさらに4点を追加され勝負あり。前身兄弟象から数えて4年ぶり、新球団となって初めての台湾シリーズ制覇の夢が叶うことはなかった。

 

 投手陣はリーグトップの475失点、ERA3.59と今年も守り中心の兄弟野球にふさわしく仕事を果たした。加えて野手全体の守りもよくチームDER.672は他球団を引き離して堂々の1位。先発はリーグトップのERA3.52で、開幕前に先発として期待された5本柱のうち林恩宇と增松瑋は共に0勝と期待外れに終わったが、最多勝(11勝)と最優秀防御率(2.48)の投手2冠を獲得したエース鄭凱文、新人から3年連続で規定投球回に到達した林煜清(9勝)、先発とリリーフで共に安定した投球を披露した陳鴻文(7勝)は順調に数字を残した。加えて途中加入の左腕コディ(7勝)の存在も大きかった。リリーフもリーグ2位のERA3.73と悪くはなかったが過去2年トーマスが務めていた抑えのポジションを固定しきれず、開幕からコロン、トーマス、謝榮豪、トニーなどが代わる代わる守護神を務める状態となっていた。中継ぎは新人から平均56試合を投げていた官大元が疲労からか33試合でERA5.73と不振だったが、ルーキー謝榮豪がチームトップの52試合に投げERA3.07と活躍。同じくルーキーの長身右腕、王梓安もチーム2位の36試合に登板し若手リリーバーの活躍が目立った。ただし左のリリーフが少なく13年に35試合に登板した邱俊瑋は今季1試合のみの登板に終わり、台湾人投手では鄭錡鴻の15試合(リリーフのみの登板数)が最多だった。

 

 対して野手陣は反省点を残すばかりの不甲斐ない成績となった。476得点はリーグ最下位で、前期に限っては211得点と3位統一に55点もの開きがあるほどの打撃不振に陥った。不動の4番彭政閔、切り込み隊長の張正偉、今季チーム最多HR(10HR)を放ちキャリアハイを記録した張志豪などは好調だったが、一方で5年契約1年目の周思齋が.277 4HR 42打点と不振で、新戦力として期待されたロペスは開幕早々解雇され、林威助も怪我により欠場が続き万全でない状態で.190 1本 11打点と期待を大きく裏切ってしまった。兼ねてから攻撃力不足が指摘されていたチームは新戦力を獲得して打開を図ったが結果としてほとんど機能することはなく、例年とほぼ同じ野手の顔触れでシーズン中盤まで戦うこととなってしまった。しかしそのような苦境の中で嬉しい誤算もいくつか見受けられた。まずは途中入団したネグリッチが怪我の影響で49試合の出場にとどまるも.366 4HR 34打点と打線の起爆剤となったこと。そして今年加入した即戦力ルーキーが活躍したことも収穫である。彭政閔の後継者候補でもある許基宏は21試合に出場し豪快な打撃を見せ4HR、OPS.993を記録し終盤5番に定着した。また2Bとしてシーズン終盤スタメン出場も多かった陳偉漢は打数は少ないながらも打率.326をマークし、昨年ドラフトで指名された選手の中からも若手捕手の陳家駒はアベレージは低いものの58試合で5HRとパンチ力を見せ付け一躍正捕手候補に名乗りをあげ、2年目のプロスペクト陳子豪は19歳ながら85試合に出場し.247 4本 29打点と一定の数字を残し、同じく高卒2年目の王則鈞は11回先発登板し最年少先発勝利を記録するなど経験を積んだ。そして後期の得点がリーグ2位と改善されたのも来季への期待を抱かせる。

 

 今年は中信兄弟として初めてのオフシーズンを迎えるが課題は山積している。08年オフの特別ドラフトで前身の兄弟象からドラフト1位で指名されるもデトロイト・タイガースとマイナー契約し入団拒否となった倪福德と中信兄弟は優先交渉権を彼のCPBLへ向けての帰国申請から3か月後の12月17日まで有しているが一向に話が進まず契約が結ばれるか不安視されている。(追記:結局契約に至らず。)また4球団で唯一メインとなるホーム球場を有しておらず、加えて「兄弟のホームのビジターファンの客の入りが思わしくない」ことを理由に来季は台北と台中のダブルフランチャイズにするとの話も出ているがこれも同じく大きな進展はなし。このような球団上層部の各方面での煮え切らない態度に嫌気がさし始めているファンも少なくない。人気のある老舗球団を引き継いだとはいえ観客数は昨年よりも落ち込み、Lamigoとは実力と人気両方で水をあけられ始めている。伝統と人気に胡坐をかかず真摯にチームを強くし、いかにファンに喜びを提供できるかを考える時期が訪れているとフロントは捉えるべきであろう。

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